そもそもインフルエンサーって何?
インフルエンサーとは、影響や勢力、効果といった意味を持つ「influence」という英語が語源で、世間や人の思考・行動に大きな影響を与える人物のことを指します。 スポーツ選手やテレビタレント、ファッションモデル、特定の分野の専門家、インターネット上で大きな影響力を持つ一般人やブロガーなどがインフルエンサーの一例です。例えばYouTubeひとつ取り上げても「〇〇系YouTuber」とあるようにその注目のされ方、影響力の持ち方は人それぞれです。そしてこのインフルエンサーが急速に増えた理由はブログやSNSを始め個人が発信力を持ったことに起因します。
歴史の流れとメディアの変遷
一昔前まではメディアといえばテレビや新聞、ラジオが主流で影響力を持てるのは大資本を持つ大手企業が圧倒的な力を持っておりました。テレビや新聞だけでなくホットペッパーなどの情報誌でも大企業が良いスペースを独占してお客様を囲い込み、その売り上げでまた広告を打つことで圧倒的強者の存在を揺るぎないものにするというサイクルを確立していたのです。そのため個人や中小零細企業は業種や業界によってはハナから勝ち目がなく、一方で大企業の不正や危機、問題となる情報はニュースが報じるまで大衆まで降りてこないため誰も知らされませんでした。そのため大手にとって都合の悪い真実の隠蔽は相次ぎ、事実が明るみに出る頃には「いきなり倒産!」ということもしばしばありました。
最たる例としては戦時下の日本を思い浮かべてください。
戦争中の日本では国民の指揮を高めるため日本軍にとって有利な報道しかなされず、戦争を応援しないような内容のメディア発信は禁忌とされていました。その結果アメリカ軍に大敗し続け勝ち目がない状況にも関わらず、1945年8月15日正午の玉音放送直前まで日本国民は「日本は勝っている!」と思い込んでおりました。メディアを通じて発信力を持つのは国や大手企業といった巨大勢力の専売特許であり、自由に大衆を印象操作することができたのです。
なぜインフルエンサーが力を持つようになったの?
しかしITの技術が進み、ブログ投稿やSNSが発達することでそれまでのクオンティティ重視のマーケティング(資本の量によって成否が決まる)からクオリティ重視のマーケティング(製品やサービスの質によって成否が決まる)へ変化しました。なぜならGoogleやYahoo!などの検索エンジンやSNSにおいては顧客ファーストの理念が貫かれているからです。GoogleやYahoo!などの検索エンジンやSNSはいずれも広告会社であり、ユーザーに対して長く滞在して多くの広告を見てもらうためには信頼できるコンテンツを表示する必要があります。そのためGoogleやYahoo!などの検索エンジンにおいては大金を投じればSEO(記事の掲載順位)が1位になれるというわけではありません。何の面白みもないコンテンツなどユーザーは見たくありませんからすぐに離脱し別のプラットフォームに乗り換え、結果的に検索エンジンやSNS企業は広告依頼を受けられなくなってしまうからです。またSNSにおいては大手企業のアカウントだろうが個人のアカウントだろうが同じ機能、平等であり、いいね!やシェアはひとり一票しか投じることができません。仮に大手企業が人海戦術やサクラでいいね!やコメントを量産したとしても、コンテンツが偽物ならばAIによる分析からあっという間に淘汰される仕組みになっているのです。
今後注目されるであろう社内インフルエンサー
ここからは事実に基づく未来予測になりますが、今後は(大手)企業内における社内インフルエンサーが求められ、急激に増えていくと思われます。これにはいくつか理由があります。
業界に精通するスペシャリストでないと商品やサービスの魅力を伝えにくい
僕自身もこうしてブログを通じて皆さんに業界のことを中心に情報をお届けさせて頂いておりますが、日頃から商品やサービスを通じて業界に精通していないと商品やサービスの魅力を伝えにくいと感じています。僕の場合ですと具体的にシェアリングエコノミーやコワーキングスペースについて語る際は実際に店舗経営をし、6年以上に渡って業界に携わってきた知識や経験がないと語るのは難しいと感じています。加えて携わっている業界の歴史自体が浅くネット上に情報が多く出回っておりませんので、ライターに記事の作成を外注するというのは基本的には今後も行わない方針です。この状況はおそらく他業種、他業界でも当てはまっていると想像できます。またインフルエンサーにはそれぞれのカラーや特徴がありますから、そもそも類似した業種、業界の方へ依頼しようとすれば選択肢はさらに限定されるでしょう。
企業は信用が命のため組織外の個人であるインフルエンサーに依頼するのはリスキー
企業は信用が命ですから業界が近いからといって個人であるインフルエンサーに軽はずみに宣伝を頼んだ場合、そのインフルエンサー個人が何か問題を起こし信用が落ちた場合、企業の信用にも大きな傷が付いてしまいます。万が一インフルエンサーが炎上した場合ネットにはデジタルタトゥーとして残り続け、拡散されたらされた分だけダメージを負うため正に諸刃の剣と呼べます。また依頼した企業とは普段独立して活動しているインフルエンサーに強く言論の統制を強いることは難しいですし、インフルエンサーは往々にしてその発信者の人柄にファンがついてきているためコントロールしようとすればその人本来の持ち味や良さが失われてしまいます。
PR案件を打つとインプレッション(サイト上に掲載されてユーザーに見られた回数)が著しく下がるため、インフルエンサー自身も案件に対して後ろ向き
これまでは商品のPR案件をインフルエンサーが行ってもさほどSNSの投稿表示には影響がなかったのですが、表示順位を決めるアリゴリズムをSNS側が変更したためか、最近ではPR案件を打つとその投稿内容がユーザーに対してめっきり表示されなくなりました。具体的にはハッシュタグで商品名を紹介するとホーム画面の上になかなか上ってこない仕様になってきたのです。また商品のPR案件を打つとフォロワーと呼ばれるインフルエンサーのファンも減少してしまうため、インフルエンサー自身も多額の金額を積まれたとしても商品のPR案件については後ろ向きな姿勢を強めています。
大企業だけでなく、国までもエンタメ要素を取り入れた発信を意識している!
今までは国や大手企業はテレビや新聞を通じて一方的に情報を届けることができました。大衆も情報源がないため国や大手企業は硬い文章一辺倒で情報提供するのが常であり、そこに視聴者や読者を惹きつけるための工夫は薄かったように思えます。しかしユーザーが主体的にメディアを選択できるようになった現代においては、どんな企業も魅力的な発信をしてユーザーを惹きつけようと必死です。そしてその流れは企業だけに留まりません。僕自身最初は目を疑ったのですが、今現在国家の命運をかけた一大プロジェクトである事業再構築補助金の申請に必要な統計分析ツールの説明動画にさえエンタメ要素が取り入れられているのです!経済産業省提供のこちらの動画はぜひご覧ください。
今後は誰しもユーザーを惹きつけるような発信力が求められる
今まではインフルエンサーというのは個人事業主やベンチャー起業家が目指すものであり、会社の看板を背負う社員が安易な発信をすることはむしろタブーとされてきました。しかし今後はインフルエンサーが様々な魅力的な発信をしている同じ土俵で大手企業も戦っていく必要があります。これはサラリーマンの方には大きなチャンスです!まだまだ大手企業に勤める人ほどインフルエンサーとしてのライティングやコンテンツ作りに慣れておりません。そのためもしも大手企業に在籍しているにも関わらず魅力的なコンテンツ作成能力や発信力を持っていれば企業内で重宝されることは間違いないでしょう。時流を捉える経営者なら専用の部署を作りインフルエンサー業務に専念させるはずです。企業のマーケティング部門においてインフルエンサーの高額募集が当たり前になる日も近いかもしれませんね。